箸にも棒にもかからないものを作れ
この公案に若手実力派5名が答えました
成田 史佳
●Fumika Narita
①今回、早乙女哲哉氏に与えられた作品テーマ「箸にも棒にもかからないもの」について、自分なりにどう解釈しましたか? また、でき上がったものについて、ご自身ではどう評価なさいますか?
箸にも棒にもかからないとは、「あまりにもひどすぎてどうにもこうにも手がつけられないこと。また、何のとりえもないたとえ」とあります。しかしながら、このような特異な存在があるからこそ見えてくるのが普遍の存在であり真理ではないかと思います。
私は、自分の表現が、その普遍の中に命を宿し脈々とつながれていくモノでありたいと願っています。その一方で、それを願えば願うほど、より特異なモノが大切にかつ愛おしく思えてきたりします。
ゆえに今回のテーマは、自分の中で大切かつ愛おしいモノと解釈させていただき、「磁製蓋物 秋彩の流水紋」を作りました。
秋という季節は夏から冬へ何かが薄れていく曖昧な感覚に浸れる、自分の中では心地よいときです。今回の作品はこの曖昧な感覚に浸りながら私自身のうつろいを彩色に絡めることで愛おしさを表現できたのではないかと思います。
②工芸家という職業を選んで「よかったなあ」と思うのは、どういう瞬間ですか?
人の意志が働かない領域である窯。その蓋をあけたとき、この職業を選んでよかったなあと思うことがたまにあります。
③工芸家という職業を選んで「失敗したなあ」と思うのは、どういう瞬間ですか?
あまり感じたことはないかもしれません。
④超絶技巧と天才的発想力。選ぶとしたらどちらですか? その理由も教えてください。
自分にとっても世の中にとってもどちらも必要な力であると思いますので、選ぶのが難しいです。
⑤あなたのいつもの作風を、音楽か、映画か、小説か、詩か、風景か、植物か、動物か、食べ物か、飲み物にたとえてください。
シャープな輪郭と淡い陰影の作風が多いと思います。
風景に例えると、月夜が照らす山の稜線、小川のせせらぎにある大きな石、大都市のビル群にかかる霧など、でしょうか。

上写真とも「流水紋陶筥」/磁土 ろくろ 布染/160×160×75mm/ 32,000円(税別)

⑥あなたは結局のところ、誰に向かって作品を作っていますか?
誰かの心の景色の中で借景という存在でいられたらと、そのような作品を作りたいと思っています。
⑦美術品、工芸品、遺宝などで、盗んでも自分の傍らに置きたいものはありますか? それは何ですか?
牧谿「洞庭秋月図」、長谷川等伯「松林図屏風」

成田史佳
1988年 千葉県出身
東京藝術大学美術学部工芸科陶芸専攻卒業
東京藝術大学大学院美術研究科陶芸専攻修了
現在 北鎌倉にて作陶
展示歴
青山桃林堂 北鎌倉ギャラリー蔵屋 日本橋三越 他
技法
だみ 墨はじき 布染 染付

