日常で作家の器を使う豊かさ

「瑞玉ギャラリー」ピュアなアマチュアリズムに徹して半世紀

​店主の河野惠美子さんと、現在は中心になって店を切り盛りする次男の修二さん。民芸調のシックな店内は開業当時のまま。
​河野さんの私物の磯矢作品。二重作櫻、手塚敏明、戸枝恭子ら、磯矢門下の漆芸家の個展も開いてきた。
​河野さん監修の本。詳しくは本をクリックしてください。

​引き出物もお気軽にご相談ください

瑞玉(すいぎょく)ギャラリー

取り扱い作家は、澤清嗣、坂本素行、星正幸、杉浦康益、三上亮、望月集、今井一美、百田輝ら多数。同敷地内に作家の器も演出に生かすレストラン「仏蘭西舎すいぎょく」ある。

 

展覧会の予定

今井一美  作陶展

2020年4月19日(日)~25日(土)

紀展(漆芸5人展)

井ノ口貴子・榎恵美・小松阿維・

田泉夏実・登根円

5月24日~30日(土)

住所 東京都板橋区板橋2-45-11   電話 03-3961-8984

営業時間 10:00~18:00(展覧会最終日は17:00)

定休日 日・祝日、水曜日(展覧会会期中は無休)

​是が非でも陶芸家を応援したかった

 

東京・板橋の住宅地にひっそりと建つこのギャラリーの名を「すいぎょく」と濁らずに読むことは、東京のやきもの好きの間ではよく知られている。開業は1973年。窯業地の窯モノではなく、作家モノの陶磁器をメインに扱ったことで、当時は異彩を放った。それまで趣味人好みの老舗サロンは存在していたが、瑞玉の場合、広く一般の人に向けてメッセージを発したことが新鮮だったといえる。つまり「日常の暮らしで作家の器を使う豊かさ」を謳ったのだ。

瑞玉を開く前、店主の河野惠美子さんは専業主婦だった。やきものに関わるようになったのは、実弟が日本料理店よし邑を経営していたから。店で使う器の買い付けを手伝っているうちに、その魅力にぐいぐい惹かれていった。当初親交を重ねたのは益子の作家たち。やきものだけではなかなか暮らしが立たないなか、情熱を失わずに作陶に没頭する姿を見て、是が非でも応援したい気持ちに駆られた。それが瑞玉誕生の発端である。

 

「まあ、命懸けでしたねえ。あら、あなたのホームページもイノチガケ? 自分が惚れ込んだものを人様にもわかっていただき、しかもお金を出していただくということになると、どうしたって命懸けになりますわよ」

 

作家その人を味わう器

こうしたピュアなアマチュアリズムに始まって、半世紀も続いていることがすばらしい。開業以来、数多くの作家たちと信頼関係を結び、展覧会を開催して、作り手と使い手をつなげてきた。また、瑞玉では、展覧会の開催期間中でなくとも、常時店内で作家の器を販売している。それもかなり多彩。瑞玉を訪ねると、名前だけ知っていた作家の実物作品に出合える可能性が結構高いのだ。

 

陶磁器だけではなく、漆器の紹介にも力を注いできた。漆芸家で東京芸大の教授だった磯矢阿伎良(いそや・あきら)氏と出会ったことがその大きな契機だったと河野さんは振り返る。漆芸は分業制作が伝統であるのに対し、氏の場合は、木地から作家が関わり、以降すべての工程を自ら行うという革命的な漆器。必然的に作家のすべてが器に投影されるが、「磯矢先生の作品はモダンで気品があって、温かみがある。まさに先生そのものでした」

 

言うまでもなく陶磁器も、その作家そのもの。単なる道具を超えた作家モノの面白さがそこにある。しかも鑑賞するだけでなく、日常的に使い、楽しみ、味わうことができる。長い間愛用していると、陶器には貫入が入り、金銀彩の磁器は渋く落ち着き、漆器はとろりと艶を増していく。使い手が「作品」を仕上げていくことになるのだ。こうした河野惠美子さん、修二さん親子の思いは、この45年という年月の間に広く伝わったのだろうか?

「どうかしら? 伝わったんじゃないかしら。この店が今でも続いていることが何よりの証拠でしょう?」

​(2018年4月 由良直也)

​坂本素行 作 象嵌珈琲碗
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