本当の芸術家が生き残る手助けを

「ギャラリー山咲木」今、荒海へ漕ぎ出す

​展覧会だけでなく常設展示も充実。目の保養になること請け合いだ。写真は坂本素行作の密象嵌。
​ついでに人形町散策も楽しめる。 写真は大正8年創業のカフェ、喫茶去快生軒。このほか、元祖親子丼の玉ひでやランチが狙い目の今半本店、ポークソテーがやたらとうまい洋食キラク、東京3大鯛焼きの柳屋、黄金芋の寿堂など名店揃い。

​とにかくお気軽にお立ち寄りください!

ギャラリー山咲木(やまさき)

取り扱い作家は、前田正博、高内秀剛、坂本素行、佐伯守美、上田哲也、豊福誠、三上亮、猪飼祐一、渡辺聡、百田輝らの陶芸家をメインに多数。

​展覧会の予定

新作陶芸展

2020年7月4日(土)~11日(土)

極楽寺がらす工房 展

2020年7月18日(土)~25日(土)

住所  東京都中央区日本橋人形町2-16-2 ユウビル1階

電話  03-6661-6865

営業時間 11:00~18:00(展覧会は19:00まで)

定休日 日・月曜日および展覧会会期の前後(臨時休業あり、展覧会会期中は無休)

サッカー馬鹿が老舗百貨店の美術部に

 

店主の山﨑哲也さんは、三越伊勢丹に27年間勤め、4年前に退社した。2年間の準備期間を経て、2016年7月、東京・日本橋人形町に「ギャラリー山咲木」を開業。美術不況の荒海へ果敢にも小舟を漕ぎ出したわけである。「山咲木」という店名は、陶芸家三上亮さんの命名。看板の字も揮毫してくれた。

 

1987年の三越入社時、日本橋本店で配属されたのが美術部だった。本人の希望ではない。それまではサッカー一筋。なにせ全国高校サッカー選手権で優勝したチーム(81年の武南高校)のセンターバックである。

大学でもサッカー部。社会人になってもサッカーを続ける意志だったが、大学最後の試合前、練習で大怪我を負ったのが運の尽きなのか、はたまた運の付き始めなのか、気がつくと日本橋で美術を売っていた。100人の同期のうち「ミスマッチが2人いる」と社内で言われ、そのうちの1人だった。

 

「最初はまったく知らないことだらけ。伝統工芸展の会場で『井上萬二さんはどこですか?』と訊かれて、『あ、それはおそらく地下の食品売場ですね』って答えたこともありましたよ。“井上まんじゅう”って聞こえたんです」

​刺激に満ちた日々が財産となる

石の上にも3年という思いで働き始めたが、時はバブルの絶頂期。作家、売り手、買い手が一体となって、この国の文化的水準を引き上げようとしていた。今流行りの断捨離、ミニマリズムとは真逆の志向で――すなわち、豪放磊落な遊びの精神で。

 

もちろん投機目的の人が大半だったし、異常とも言える時代だったが、異常だろうがなんだろうが、金を出す人がいないかぎり美術は残らない。桂離宮も銀閣もこの世にない。その美術熱の中で山崎さんは、やきものの面白さに目覚めていった。一流陶芸家の仕事ぶりや、その器を使う一流料理人の感性に触れ、刺激に満ちた日々を過ごしたのである。要するに非常に幸運だった。

 

日本橋本店では、浅野陽や藤本能道ら東京芸大の陶芸家とその教え子たちの個展をメインに担当。のちに池袋店へ移ってからは本店との差別化を図り、全国各地の若手陶芸家に目を向けた。どの交友もすべて財産として余さず蓄積され、今日のギャラリー山咲木に生かされている。

 

「店の方針としてはプロフェショナルだけを紹介していくこと。美術には医者や弁護士のような資格試験はありませんが、やっぱりプロとプロではない人の間には歴然とした差がありますよ。地道にそれを伝えていくことで、本当の芸術家が生き残っていく手助けができるんじゃないですかね」

 

ついでながら、山﨑さんが三越伊勢丹を退社した理由は単純明快。社内で美術担当ではなくなったからだ。27年の月日は人を変える。(2018年4月 由良直也)

​坂本素行 作 象嵌珈琲碗
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